お人好しと無垢
〈ルシエラ〉
ところでアルさん? 私がお手伝いすることってなんでしょうか?
永劫牢を出た所で少女は問いかける。アルドベリクは立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
〈アルドベリク〉
……アルドベリクだ。
〈ルシエラ〉
私がお手伝いすることをちゃんとお聞きしてなかったんですが……?
それ以外の問題など何もないというような目で、彼女はこちらを見返す。
〈アルドベリク〉
…………。
言うべきことを先に言われてしまった気がして、アルドベリクは話を進めた。
その話は今回の王侯会議で決まった彼が担う役割についてである。それは――。
ある世界の人間があらゆる技術を結集して、ひとつの超越した存在を作り上げた。
それは巨大な兵器であった。名を「エルデステリオ」という。
人々は不遜にもそれを「神」と呼び、魔族に戦いを挑んできたのだ。
〈アルドベリク〉
そして、俺にそのまがい物の神を打ち倒す役目が回ってきた。
〈アルドベリク〉
なぜかイザークがお前を使うことを勧めてきた。
お前、なぜ魔界で囚われていた。
〈ルシエラ〉
ああ、それですか。単に魔界に来たときに捕まっただけですよ。
〈ルシエラ〉
せっかく私を頼ってくれたんですからなんでも手伝いますよ。
〈ルシエラ〉
なんといっても、私を解放してくれましたからね。
開放感を表現したいのか、彼女はひらりと白い羽を広げて宙を回った。
〈ルシエラ〉
早速ですが、ひとつ提案です。
〈ルシエラ〉
相手がそんな巨大な兵器で向かってくるなら、こちらも同じもので抵抗するのはどうでしょう。
〈アルドベリク〉
というと?
〈ルシエラ〉
魔界の巨人タウルケンドに相手させるんです。
〈アルドベリク〉
ふむ。
と言って彼は腕組みをした。たしかにその方法なら相手に対抗できるかもしれない。
同時にそんなことをすれば、人の世界にどんな被害をもたらすかわからない。
それを考えると最善の策には思えない。
〈アルドベリク〉
いや……!
頭をあげてみると、すでに少女の姿はなかった。
〈アルドベリク〉
まったく……。
慌てて少女の後を追ったが彼が再び彼女と出会った時、巨人タウルケンドの姿はすでになかった。
〈ルシエラ〉
あ、アルさん! タウルケンドなら快く了承してくれましたよ。
〈アルドベリク〉
……アルドベリクだ。余計なことをしてくれたな。
〈ルシエラ〉
でも、おっきい人にはおっきい人をあてがった方がいいですよ。
〈アルドベリク〉
そういう問題ではない。無駄に被害を増やすな。
〈ルシエラ〉
ああ、なるほど。アルさんはお人好しですね。
天使のくせに妙な言い様だ、と彼は思った。
〈アルドベリク〉
……アルドベリクだ。追うぞ。
〈ルシエラ〉
はーい。わかりました!
