次なる戦いへ

〈イザーク〉
どうせならフェスティバルでも
見物すればいいじゃないか?

〈イザーク〉
まだ停戦の約束は生きているはずだ。

ミカエラは驚く様子もなく、ただ見返す。
ただし、聖王の顔ではない別の顔でだった。

〈ミカエラ〉
そこまでなれ合いはできません。

〈イザーク〉
そうか。

姉として、そう言われると、
イザークもそれ以上言葉を続ける
気にはならなかった。

〈ミカエラ〉
遠征の準備もやらなくてはいけませんから。

言い訳のようにも謝罪のようにも聞こえる言葉が
ふたりの間に漂う。

そして、それぞれに割り振られた役を
再び演じ始めるまで、それは続く。

〈イザーク〉
どうやらあの子供たちが故郷を離れる時に
持たされたものの中に、特殊な石があったようだ。

〈イザーク〉
歪みの発生を教えてくれるもので、
彼らを元の世界に導いてくれる。

〈イザーク〉
いつか故郷に帰って来られるように、
持たせたのだろう。

〈ミカエラ〉
親心でしょう。
それが幸いしましたね。

ふと思い出したように、ミカエラが言う。

〈ミカエラ〉
きっとイアデルにも、あなたに持たせた
何かがあるはずです。

〈イザーク〉
俺が故郷に帰るための何かをか?

〈ミカエラ〉
分かりませんが、何かある。
そんな気がします。

〈イザーク〉
そうだとしても、死人に口はない。

〈ミカエラ〉
それは死界の住人でなければわかりません。
聞いてみればいいのでは?

〈イザーク〉
感傷的だな、姉さん。

冗談を受け流すように呟いたその言葉は、
もちろん自分にも向けられていた。

会場の一画に異様に人が集まっている場所が
あった。

何事かと人だかりの中を覗いてみると、
小さなテントがあった。

〈ミィア〉
ありがとう!

テントから出てくるお客さんは
皆一様に満足げであった。

何よりも若い女性が多かった。

〈ヴェレフキナ〉
まいどー。君の前世は牛やで。
スピリチュアルが教えてくれたんやで。

〈ヴェレフキナ〉
ご先祖さん大事にしいやー。

〈シミラル〉
次の方どうぞ。
本場のスピリチュアル占いで、
あなたの魂を解きほぐします。

〈ヴェレフキナ〉
ほかにも死界のソウルフードもあるよ。
ここ以外では食べられへんよ。

〈アルドベリク〉
何をやっている……。

〈ヴェレフキナ〉
あ。キミらか。
そらキミ、死界のアッピールやんか。

〈ヴェレフキナ〉
骨とか魂とかの悪いイメージしかない死界の
イメージアップを目指してね、一肌脱いどるんよ。

〈シミラル〉
アッピールやで。アッピール。

〈ウィズ〉
元の世界に戻らなくても大丈夫にゃ?

〈ヴェレフキナ〉
問題ない、ない。
ボクらの世界は役割分担がはっきりしてるんや。

〈ヴェレフキナ〉
通常行われる輪廻の理はイザヴェリ言うんが
回してるから問題ないねん。

〈シミラル〉
私たちは主に問題が起った時の対応が専門なの。

〈ヴェレフキナ〉
用も終わったし、魔界に来ることなんか、
滅多にないことやし、アッピールを始めたわけよ。

具体的には何をしているんですか?
と君は訊ねる。

〈シミラル〉
スピリチュアル占い。

〈ウィズ〉
ああ、それは説得力あるにゃ。

〈ヴェレフキナ〉
あとは死界のソウルフードの紹介やね。食べる?

〈ヴェレフキナ〉
あ、死界やからソウルとかそんなんちゃうよ。

〈シミラル〉
嘘つけ、ドヤ顔をしてただろ。

〈ヴェレフキナ〉
お。キミやるんか?
やるんやったらやったるよ。

また始まったのか、と君が腕組みすると、
ヴェレフキナを呼ぶ声がした。

〈イザーク〉
貴公たち、こんなところにいたのか。

〈ヴェレフキナ〉
なんや、キミもスピリチュアル占いに
興味あるんか?

〈イザーク〉
そうではない。準備が出来たぞ。

〈エストラ〉
リュディたちが持ってきた石の力のおかげで、
歪みの発生する場所は予知できた。

〈エストラ〉
そこを通って、彼らの世界へ向かう。

話を聞いて、
リュディとリザは目をぱちくりさせている。
何の話か理解できないようである。

〈アルドベリク〉
これからお前たちの世界を取り戻しに行く。

〈リザ〉
それって元の世界に戻るってこと?
でもあそこには怪物たちが……。

〈ルシエラ〉
だから、そいつらを蹴っ飛ばしにいくんですよ。
つまらない予言と一緒に。

失ったと思っていたものを取り戻せる。
そんな希望がリザとリュディの体を貫き、
喜びいっぱいの笑顔をふたりに残す。

長い寄り道になりそうだね。と君はウィズに言う。

〈ウィズ〉
にゃはは。旅は道連れとも言うにゃ!
諦めて楽しむしかないにゃ!

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