哀れな魂のために

〈ヴェレフキナ〉
往生しいや。

と言って、ヴェレフキナは海に沈んでいく怪物を
見送った。

どこか優しげな視線だった。

反対に、忌々しげに恨みの言葉をカリンは呟く。

〈カリン〉
アイツのせいでどれほどの人々が命を失ったか。

水面を見つめながら、ヴェレフキナは言った。

〈ヴェレフキナ〉
キミの意見はもっともやけど、
ボクらの考えは違う。

〈シミラル〉
魂に罪はない。

君はふと思い出す。
魂は記憶の集まりに過ぎない、
という彼らの発言を。

肉体を失った魂は死界で浄化され、
再び別の生を生きる。

彼らの世界の理から見れば、
確かに罪はないのかもしれない。

〈カリン〉
それなら罪はどこにあるの?
アタシたちはこの悔しさをどうすればいい?

〈ヴェレフキナ〉
キミらとはどうせ話合わんから、
これ以上は言わんけど……。

〈ヴェレフキナ〉
そんなこと考えながら生きてておもろいか?

〈カリン〉
面白いとか面白くないではない!

憤慨するカリンを気にすることもなく、
シミラルが言った。

〈シミラル〉
生きていることは記憶の蓄積でしかない。
それなら良い記憶を溜めないと、時間の無駄。

〈シミラル〉
きれいな景色や美しい生き物。
美味しい食べ物や楽しい人々。

〈シミラル〉
私は造られた存在だから、
単純に良い記憶を蓄積できることがうれしい。

〈シミラル〉
あなたがもっと前向きに考えてくれたら。
この戦いのことが良い記憶になる。

カリンは黙っていた。
むしろ黙っているしかない、といった様子だった。

〈ウィズ〉
にゃは。
いまは無理でもいずれは
前を向くしかなくなるにゃ。

〈ウィズ〉
それでいいにゃ。

〈カリン〉
……わかった。

〈シミラル〉
この旅は楽しかった。
ヴェレフキナ、ありがとう。

〈シミラル〉
あなたが私を造ってくれなかったら、
この気持ちもなかった。

〈ヴェレフキナ〉
ええんや。

海が怪物の巨体を全て呑み込むと、
海面に大きな渦が生まれた。

ふたりはその渦を静かに見つめていた。

〈シミラル〉
本気にするなよ、トーヘンボク。

〈ヴェレフキナ〉
キミ、ほんまに……。
かわいい奴やで。

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