中級 偉大なる王の教え

〈イアデル〉
これが侍従長のアクサナじゃ。

イアデルはそう君たちに優しそうな天使を
紹介する。

〈アクサナ〉
よろしくお願いいたします。王宮の一日は、
イアデル様のご講義にはじまります。

王宮に滞在する事となった君たちは、
ミカエラたちと一日を共にする事になった。

〈ウィズ〉
考えてみたら、
神様の話を直接聞けるなんて凄い事だにゃ。

君もそう思う。
信仰の対象として人々の心に
安らぎを与える神の意志。

それは普段、神官や僧侶の言葉を借りて
聞く事しか出来ない。

〈イザーク〉
どうせまたおんなじ話だろ。
それより戦い方を教えて欲しいよ。

〈ミカエラ〉
きっとそれだけ大切なことだから
何度も話されるのよ。

〈ミカエラ〉
私は戦い方なんかよりよっぽど
為になると思うけどな。

〈ウィズ〉
なんだか対照的な二人にゃ。

〈アクサナ〉
お静かに! ご講義が始まりますよ。

イアデルは演壇の上に大きな天秤を置き、

〈イアデル〉
よいか。万事においてもっとも重要なことは、
均衡、バランスである。

〈イアデル〉
この様に、双方の力が同じであれば、
秤が傾くことはない。それは天下も同じ事……。

イザークがため息交じりに
イアデルの言葉を続ける。

〈イザーク〉
どちらか一方の力が勝ればたちどころに
均衡は崩れ、民は乱れる。

〈ウィズ〉
ぜ、全部暗記してるにゃ……。

〈イザーク〉
そんだけ同じ話聞かされてるってことだよ!
それよりお前、本当に強いのか?

〈イアデル〉
おい! 聞いているのか!
まったくお前らはいつもいつも……。

〈ミカエラ〉
ごめんなさい。

〈イザーク〉
オヤジの話は退屈なんだよ。
オレは強くなりたいんだ。

そう言ってイザークは席を立ち、
その場を去ろうとする。

〈ウィズ〉
なんだかイザークは反抗期だにゃ。

本当にそれだけだろうか?
君はこの親子の関係にそれ以上の何かを感じた。

〈アクサナ〉
イザーク様、お待ちください。

険悪な雰囲気を打ち消すかのように、
アクサナが口を開いた。

〈アクサナ〉
如何でしょう? 本日のご講義はこの位にして。

〈アクサナ〉
こちらの魔法使い様の実力を見せて頂く、
というのは?

〈イザーク〉
それは面白そうだな。
それだったら見ててやるよ。

〈イアデル〉
いいじゃろう。

〈アクサナ〉
さぁ、魔法使い様。
急なお願いで申し訳ありませんが、
お力を見せて頂けますでしょうか?

と、アクサナは魔物を召喚し始めた。

 

〈アクサナ〉
イヤッハー!
お前ら、なかなかやるじゃねぇか!

〈ウィズ〉
な、なに事にゃ?

先ほどまで物腰柔らかだった
アクサナの口調が突然荒くなった。

もしかして、魔族が正体をあらわしたのか?

〈アクサナ〉
魔族だぁ? ザけた事言ってんじゃねーよ!
ただ昔の血が騒ぐだけさ。

昔の血?
アクサナのあまりの豹変ぶりに
ただ驚くだけの君たち。

〈イアデル〉
アクサナは元々、
荒事専門の傭兵部隊を束ねておったのじゃ。
ああなるともうワシでも……。

〈アクサナ〉
さぁお前たち、準備はいいか?
たっぷり楽しませてくれぇ。

どうやら君たちの戦いを見て、
アクサナは興奮してしまったようだ!

 

〈アクサナ〉
私としたことが、取り乱してしまって……。
誠に申し訳ありません。

戦いを終え、ようやくアクサナは
正気を取り戻したようだ。

〈ウィズ〉
なかなか過激な侍従長だにゃ……。

その日の晩、クロノワが魔界から戻ってきた。

〈クロノワ〉
思ったよりも簡単に取り戻せたよ、ほら。

そう言って、
クロノワは懐から奇妙な獣を取り出した。

と、メティースはその獣を抱きしめる。

〈メティース〉
ほら、イストワーレ! トートだよ。トート!

〈イストワーレ〉
うん。トートだね、トートだねぇ。

〈トート〉
んーええ気持ち……。

〈トート〉
てドアホ!

〈トート〉
ちょ、お前ら二人そこに正座せい!

トートはメティースとイストワーレを座らせると、
コンコンと説教を始める。

〈トート〉
大体お前らワイの飼育係ちゃうんか?
それを、
ほったらかしにしよってからに!

〈ウィズ〉
こ、これが記憶を蓄積する神獣なのかにゃ。

〈クロノワ〉
はい。これが神獣、トートです。
見た目はこの通りですが、大変神聖な存在です。

〈トート〉
せや! ワイは偉いねん。
それをお前なぁ。

と、今度はクロノワに食ってかかるトート。

〈クロノワ〉
は、はぁ……。

〈トート〉
ワイが魔界のネェちゃんとエー感じに
なったろ思てたトコを邪魔しよってからに!

〈ウィズ〉
ど……、どういう事にゃ?

〈クロノワ〉
魔界の使い魔にそそのかされていたところを
私が助けたのです……。

そこまで言って膝をつくクロノワ。
見ると腕から血がにじんでいる。

〈トート〉
ホンマ、無理しよってからに……。

〈ウィズ〉
簡単に取り戻せた訳でもないみたいだにゃ。

〈クロノワ〉
でも、まぁ。魔界から帰ってきたにしては……
大した事ないでしょう?

そう気丈に微笑んで見せるクロノワ。

〈クロノワ〉
とにかく、後はトートから正しい記憶を取り出し、
『歴史の原本』に書き込んでいけば……。

〈メティース〉
あとは私たちがやりますから、
クロノワ先輩は神殿へ帰って休んでください。

〈クロノワ〉
そうか? じゃ、あとは頼んだぞ。

そう言って、クロノワは何かの呪文を唱えると、
君たちの前から消えていった。

〈メティース〉
さてっと。仕事にかかりますか?

そう腕まくりをして
『歴史の原本』を開くメティース。
本の中身はまだ白紙である。

〈イストワーレ〉
はーい。でもミカエラ様とイザーク様、
結局分かれちゃうんだよね。

君の知る歴史では、
確かにミカエラが天界の王位につくと同時に
イザークは堕天する事になっている。

〈トート〉
まーいわゆる、家督争いちゅーやつやな。

〈メティース〉
……そうだ!
今ならもっといい歴史を
作れるんじゃないかしら?

〈ウィズ〉
どういうことにゃ?

〈メティース〉
この先の正史では、神界はやがて崩壊し、
天界と魔界は長い長い戦争をするの。

〈イストワーレ〉
つまり、ミカエラ様とイザーク様が
戦うことになるんです。

〈メティース〉
でもそんなの誰も望まないはずよ。
『歴史の原本』が白紙になった今ならきっと……。

これからの歴史を変えることができる?

〈メティース〉
そういうこと!

〈トート〉
待て待て待て!

〈イストワーレ〉
やっぱり、ダメですか?

〈トート〉
そのミカエラ言うんは、どうなんや?
べっぴんさんか?

〈メティース〉
そりゃ、もうスっごくお綺麗ですよ。

〈トート〉
よっしゃ! いっちょやったろうやないか!

確かに争いの歴史なんて誰も望んでない。
君たちは、彼女たちと行動を共にする事にした。

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