魂呼

魔界に戻った、つまり甦った君は
さっそくヴェレフキナに言われた通り、
彼ら死界の者を呼び出す儀式の準備をした。

〈クィントゥス〉
ほら、言ってた草を拾ってきたぜ。

〈ウィズ〉
ありがとうにゃ。
茎の皮をむいて、
その皿の上に置いてほしいにゃ。

必要なものを集めるのは、
魔界の住人たちに任せ、
君は簡易的な祭壇を用意していた。

知っている魔法の祭壇に似た所があったので、
こちらはすぐに準備出来た。

ただヴェレフキナに指示されたものの中には、
特殊なものも多かった。

〈エストラ〉
悪霊キュウリと無慈悲茄子……。
こんなものをどうするんだ?

〈ウィズ〉
そのふたつに棒を4本刺して、
牛と馬の人形を作ってほしいにゃ。

エストラはウィズの指示通り、
4本の棒をそれらに差し、手足に見立てた。

〈エストラ〉
牛と馬……には見えんな。

〈ウィズ〉
後は供物にゃ。
獣の血を使ったものがいいと
言っていたにゃ。

〈クィントゥス〉
それなら、そこらの獣を掻っ捌いて
供えればいいんじゃねえか。

〈クィントゥス〉
獣……獣……。
獣っと……?

と、あたりを探るクィントゥスの視線、
エストラの視線、君の視線が、ひとつに交わる。

〈ウィズ〉
にゃ!? 何こっち見てるにゃ。
私をそのへんの獣と一緒にしないでほしいにゃ。

〈ウィズ〉
そもそもキミ!
なんで私を見たにゃ!
獣だと思っていたにゃ!

考えもなく見てしまっただけです、
と君はウィズをなだめる。

ウィズが毛を逆立てて
フーフー言っている所にルシエラがやってくる。

魔界のお菓子〈ダークサンブラッド〉が
山のように盛られたトレーを両手に抱えている。

〈ルシエラ〉
皆さん、ご苦労様です。
ほら〈ダークサンブラッド〉の差し入れですよ。

〈クィントゥス〉
お。ありがてえ。
ひとつ頂くとすっか。

君もクィントゥスに倣い、ひとつ手に取る。

ふと、その豆を血色に煮て作られたお菓子を見て、
君はあることを思い立つ。

別にこれでもいいんじゃない、と。

〈ウィズ〉
キミもそう思うかにゃ?
私もいまそんな気になったにゃ。

君は周りのみんなに意見を求めた。
みんなは……。

〈クィントゥス〉
いいんじゃねえか。

〈エストラ〉
いいと思うぞ。

〈ルシエラ〉
なんでもいいと思いますよ。

というわけで、
君は2,3個取り分けて、
祭壇の前に供える。

〈ウィズ〉
では火を起こすにゃ。

君は簡単な魔法を使い、
集めてきた植物の茎に炎を灯す。

〈ルシエラ〉
これで完成ですか?

〈ウィズ〉
そうにゃ。
ヴェレフキナたちはこの火を目印にして、
その牛と馬に乗って、やってくるらしいにゃ。

炎から立ち昇る煙が空へと伸びてゆく。
たしかにそれは何か道しるべのように見えた。

しばらくすると、
炎に合わせ揺らめく牛馬の影が、
意思を持ったかのように蠢き始める。

〈エストラ〉
始まったか。

あらぬ方向へと伸びたり縮んだりを
繰り返した後、炎が消えた。

一瞬下りた暗闇の薄布に視界を奪われ、
闇と静寂が君を包む。

やがて闇に眼が慣れてくると、
目前に明らかな気配を感じる。
そこには、

〈???〉
まいど。

〈???〉
まいど。

〈エストラ〉
……なんだこれは?

なんでしょうか? と君はエストラに同調する。

声に聞き覚えはあるのだが、
姿形が違い過ぎて、
どう考えればいいのか悩ましい。

〈ヴェレフキナ〉
なんやとはなんやねん。
ボクやヴェレフキナや。

〈シミラル〉
なんやとはなんやとはなんやねん。シミラルや。

〈ヴェレフキナ〉
せっかく死界から出張って来たのに、
その態度、ごっつ傷つくわ。

〈ヴェレフキナ〉
こっちはこれでも切り札やねんで。

〈ヴェレフキナ〉
……まあそれはええわ。
それよりもアレ、なんや?

と鼻を祭壇の方へ向ける。
〈ダークサンブラッド〉のことを
指して言っているようだ。

供物です。と君が答える。

〈ヴェレフキナ〉
アホ。それは分かってる。
ボクは獣の血を使え、言えへんかったか?

言いました。とキミはヴェレフキナの言葉を認める。

〈ヴェレフキナ〉
せやろ。言うたやろ。
それをなんや、
あんなけったいなモン使うて。

血の色をしているし、
美味しいから大丈夫だと思った、
そんな風なことを言って君は自己弁護を試みる。

〈ヴェレフキナ〉
あーなるほど。
せやね、血の色してるしね、それに美味しいし、
これでもまあええやろ。

〈ヴェレフキナ〉
……ってなるか、アホ!
キミ、2本足で立ってたら、熊でも人や思うん?
想わんやろ?

〈シミラル〉
でもヴェレフキナ。
これ本当においしい。

説教するヴェレフキナの後ろでは、
シミラルが勝手に供物を食べ始めている。

〈ヴェレフキナ〉
キミ、ボクが説教してる横で、何食べてんの?
常識あるん?
あとボクの方が偉いんやから、タメ口やめてな。

〈シミラル〉
うるさい、バカ。

そのやり取りを皮切りにして、
ふたりはまた喧嘩を始めた。
それを見ながら君たちは、

〈ウィズ〉
……言われたころはやったにゃ。

と納得するしかなかった。

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