プロローグ

いまから3日前、君は1通の手紙を受け取った。
そこに記されていたのは、3日後の今日の
日付といま君がいる場所だった。

便箋の最後にあった優雅な筆跡の署名を見て、
君はここに来ることを決めた。

心地よい風が、絶えず花の香りを運んでくる
丘だった。

〈ウィズ〉
うーーん。気持ちいいにゃ。

ウィズが前足をぐっと伸ばし、
待ちぼうけでこわばった体をほぐす。

〈ウィズ〉
ちょっと早く来すぎたにゃ。

確かに少しだけ早かったかもしれない。
ただ相手は時間にとても正確な人だった。

それを考えると、
遅れるよりも待ちぼうけた方がいい。
と、君はウィズに返す。

〈ウィズ〉
それもそうにゃ。
……噂をしていたらなんとやらにゃ。

ウィズの視線が君の頬をかすめるように、
通り過ぎてゆく。
背後に立つ何者かに注がれていた。

〈オルハ〉
お久しぶりです。黒猫の魔法使い殿。

〈ウィズ〉
また異界の歪みにゃ?

〈オルハ〉
はい。今日、ここで。

〈ウィズ〉
いつも思うけど、オルハは歪みを予知する時、
どんな風に知るにゃ。
何か兆候を発見するにゃ?

〈オルハ〉
いいえ違います。
……うーん、どう表現すればいいか。

〈オルハ〉
古い記憶を思い出すように、場所が見えるんです。
この丘の風の温もりや運んでくる花の香りも、
感じることが出来ます。

〈オルハ〉
思っているよりも具体的な体験ですよ。
私の予知というのは……。

〈ウィズ〉
で、今回の歪みは具体的にはどこにでるにゃ?

〈オルハ〉
はい。そうですね……あ。

〈ウィズ〉
なんにゃ?

〈オルハ〉
ふたりの目の前……!

オルハの言葉は最後まで聞こえなかった。
君は逃れる間もなく、
目の前に広がる歪みに呑み込まれた。

異界の狭間を旅する、
ほんのわずかな時間では
確かめることもできなかったが、

呑みこまれる直前、
君の体に誰かがしがみついた。
小さな体だった。ふたつの。

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