訣別、それから

〈レオナ〉
……すごい。

これまでただ打ちのめされるだけだった
自分たちが攻勢に出ている。

その単純な事実に、思わず感嘆する他なかった。
それも全て、別の世界から来た者たちの
力のおかげだった。

〈ミカエラ〉
どうしました? まだ戦いは終わっていませんよ。

〈レオナ〉
いえ、本当に予言が覆るかもしれないから……。
驚いてしまって。

〈ミカエラ〉
あなたたちにとってはとても重要なもの
だったのですね、その予言は。

〈レオナ〉
私たちの世界はかつて一度滅びたと
伝えられています。
その時に全ての大地が海底に沈んだと。

〈レオナ〉
私たちは再び起こるであろう滅びの時を、
予言によって、思い出すように生きてきました。

〈レオナ〉
でも、いま思うと予言とは何だったのか……。
分からなくなりました。

〈ミカエラ〉
戒めは大切です。どんな時でも。

〈レオナ〉
予言のために不幸になった人もいました。

〈レオナ〉
彼らのことを考えると……。

〈イザーク〉
言葉に縛られたり、囚われたりすることはない。
お前たちの世界はそれを身を以って知った。

〈イザーク〉
重要なことだ。

無言のまま少女は頷いた。
まだ全てに納得できたわけではない。
消化しきれない何かが残っている。

だが、過去に囚われるわけにはいかない。
もちろん予言にも。

〈レオナ〉
行きます。
この勝利をみんなに伝えないと。

と言って、少女は飛び去っていった。

ふたりだけとなった空で、
イザークが唐突に言った。

〈イザーク〉
ヴェレフキナに話を聞いてみた。

かつて話題にあがったイアデルの話のことだと、
ミカエラはすぐに察した。

イザークが話し始めるのを、
彼女はただ静かに待った。

〈イザーク〉
魂は記憶の集合に過ぎない。

〈イザーク〉
だから俺の記憶の中にあるイアデルが
何と言っているかが重要らしい。

〈ミカエラ〉
で、父はなんと言っていましたか?

〈イザーク〉
言葉に囚われるな、だ。
さあ、次の戦いがある。行こう。

と簡潔に答え、
イザークはその会話を終わらせた。

ミカエラも追求はしなかった。

だが脳裏に浮かぶのは、
ふたりを分かつことになった父の言葉である。

それに囚われるな。
イザークの中の父はそう言った。
ではミカエラの中の父は?

〈ミカエラ〉
ええ、行きましょう。戦いが待っています。

それだけ言って、彼女はイザークの後を追った。

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