ワイルドハント

暗闇を抜けて、飛び出した先は海だった。

〈ウィズ〉
にゃにゃ!

突然のことに何もできず、
君は海に飛び込む覚悟をし、
身構える。

だが服の襟首をつかまれた感覚と、
ガクンと重力に逆らい、持ち上げられる感覚が
同時にやってくる。

気付けば君は海面すれすれに留まっている。
浮いているというよりは、
吊り下げられているに過ぎないが。

〈アルドベリク〉
大丈夫か。

〈リザ〉
大丈夫ですかー?

小脇にリザを抱えたまま、
腕一本で君を持ち上げている。

涼しい顔はいつも通りである。

〈アルドベリク〉
リザ、ここには陸がないのか?

彼の言うように、
その世界は見渡す限り海しかなかった。

〈リザ〉
陸? 島のこと?

〈アルドベリク〉
ああ。そうだ。

〈リザ〉
島なら、上に。

君とアルドベリクは上を見上げる。
その世界の島は空に浮いていた。

君たちは、ひとまず上空浮かぶ島のひとつに
腰を落ち着けた。

アルドベリク。
ルシエラ。

イザーク。
ミカエラ。

リザとリュディ。
それに──。

〈ウィズ〉
後は火を焚くだけにゃ。

君は持ってきた道具を配置して、火を焚く。
以前と同じように牛と馬の人形が震えだした。

〈ヴェレフキナ〉
まいど。

〈シミラル〉
まいど。

〈ウィズ〉
便利にゃ。どこへでも移動できるにゃ。

〈ヴェレフキナ〉
そうでもないんや。
こっちで儀式してくれなアカンし、
そんなに長くはおられへん。

〈シミラル〉
体もまがい物だし。

最後にヴェレフキナとシミラル。

彼らはリザとリュディの世界を救うために、
集まったのだ。

もちろん君も。

〈イザーク〉
さて。全員揃ったところで
やるべきことをやろうか。

〈ミカエラ〉
ええ。こうしている間にも、
この世界は滅びつつあります。
急ぎましょう。

〈ルシエラ〉
んー。でも敵はどこですか?
隠れているんでしょうか?

〈ヴェレフキナ〉
ここにおるのは本体ちゃう、残りカスや。
そこまで上等な思考は持ってへん。

〈ヴェレフキナ〉
ちょっと探したら、見つかるやろ。

〈アルドベリク〉
その必要はないようだぞ。

君は気配に気づき、背後を見やる。
魔界で見たのと似た怪物がそこにいた。

似てはいるが、やたら巨大だった。

〈アルドベリク〉
思ったより大きいな。

〈ミカエラ〉
ええ。そうですね。

とはいえ、彼らにとっては
どうという問題ではないようだ。

〈イザーク〉
まずは一戦交えてみるか。

〈ルシエラ〉
それじゃあ、皆さん!
ぶっとばしますよ!

完勝だった。

敗れた怪物の体がボロボロと崩れていく。
力を失い、形を保っていられなくなった
ようだ。

〈ウィズ〉
思ったより早く終わりそうにゃ。

いたずらっぽくウィズが言った。
確かに頼もしい仲間は多い。

これなら討伐はすぐに終わるだろう。

ふと君は風切り音に気がつく。
遠くの空に小さな何かが見える。
それは段々と大きくなっている。

近づいている。
そう思った時には、それが人だとわかった。

猛スピードでふたりの少女がやってきて、
君の前で止まった。

〈???〉
あなたたち……誰?

〈???〉
怪物を倒したのは、あなたたちなの?

その声を聞いて、リザとリュディが顔を出す。

〈リュディ〉
レオナ! カリン!

〈カリン〉
リザ、リュディ!
どうして戻ってきたの!
せっかく逃がしてあげたのに!

〈レオナ〉
この世界と一緒にあなたたちまで死ぬことはない。
予言とともに滅びるのは私たちだけで充分なのよ。

〈リザ〉
違うよ。滅びるために帰ってきたんじゃない。
そんな予言を、蹴っ飛ばしにきたのよ!

〈リュディ〉
僕たちにはすごい味方がいるんだ!

両手を広げて、後ろに控える君たちを紹介する。
子供なりの精一杯の表現だ。

〈カリン〉
何者なの……。人ではないわよね。

少女は君たちの前に降り立つ。
靴先に宿る光が優しく消える。

どうやらあの靴を使って飛んでいるようだ。

〈アルドベリク〉
何者か……どうする?
神や正義を名乗るのは、嫌だぞ。

アルドベリクは仲間たちに確認する。
それならとばかりにルシエラが答えた。

〈ルシエラ〉
では通りすがりのお人好しということで
どうですか?

〈イザーク〉
それがいい。で、まだ怪物はいるのか?

〈カリン〉
ええ。とんでもなく強いのが3匹。

〈レオナ〉
でも正直どうすればいいのか、わからない。
あなたたちは強い、でも……。

〈リュディ〉
予言が気に入らないなら、信じなければいい。
別の運命を自分で作ればいい。

〈リザ〉
あたしたちは旅でそれを学んだのよ。

〈ミカエラ〉
時として子供の方が正しいことを言うものです。
正しい道に進みなさい。
私たちが手伝います。

少女たちは静かに頷いた。

〈ミカエラ〉
では参りましょう。

羽を広げる者、再び不思議な道具に光を宿す者、
みんな空へと上がってゆく。

〈ウィズ〉
ちょ、ちょっと待つにゃ!
私たちは飛べないにゃ!

抱えてもらいながら戦うのもさすがに気が引ける。

〈レオナ〉
それなら大丈夫です。
私たちには船団があります。

〈レオナ〉
その一員として戦ってください。

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